私たちが感じる幸福感は、脳内で分泌されるセロトニン、オキシトシン、ドーパミンという3つの神経伝達物質、いわゆる三大幸福ホルモンによって大きく左右されています。これらのホルモンはそれぞれ、心と身体の健康、愛やつながり、成功や達成感という異なる側面から幸福感を生み出します。しかし、この中でも特に注意が必要なのがドーパミンです。SNSやYouTube、スマホゲーム、またマッチングアプリを代表する現代的な恋愛は、手軽にドーパミンを刺激しやすく、過剰な使用がドーパミン依存症のリスクを高めています。さらに、ドーパミンが強く偏ると、セロトニンやオキシトシンによる持続的な幸福感が損なわれる可能性があります。この記事では、セロトニンを増やす方法、オキシトシン的幸福を高める行動、ドーパミンを健康的に活用する方法をバランスよく紹介し、これらのホルモンを正しく積み重ねていくことで、持続的な幸福感を得る具体的な方法をお伝えします。幸せを作る三大ホルモンとは?三段重理論で解説幸せの三段重理論とは、「精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法」樺沢紫苑 (著)で提唱されている理論です。この理論は、私たちが幸福を感じるときに脳内でどのような反応が起き、どの神経伝達物質が分泌されているのかを、精神医学や脳科学の観点から分類したものです。この理論では、幸福を次の3種類に分けています。セロトニン的幸福:心と身体の健康によって得られる幸福オキシトシン的幸福:愛や人とのつながりから得られる幸福ドーパミン的幸福:成功や達成感による一時的な幸福さらに、これら3つの幸福には優先順位があることが重要です。この順番を守ることで、持続的かつ満足度の高い幸福を実現できます。<幸せの優先順位を学ぶメリット>持続的な幸福感を得られるセロトニン、オキシトシン、ドーパミンがバランスよく作用することで、幸福感が安定します。自分に不足している要素を知るたとえば、自分でセロトニン不足をチェックすることができ、心身の健康状態を見直せます。短期的な不満を和らげる優先順位を意識することで、「すぐに幸せを感じられなくても大丈夫」と思えるようになります。衝動的な行動を抑えるドーパミンの過剰な追求を防ぎ、健康的な目標設定が可能になります。他人と比較しない心を養えるオキシトシン的幸福が強まることで、愛やつながりを重視した生き方ができます。3つの幸福の優先順位|幸せを実現するために大切なこと幸福感を生み出すために重要なセロトニン、オキシトシン、ドーパミンは、それぞれが異なる役割を持つ幸福ホルモンとして知られています。この3つの神経伝達物質は、「3大ハッピーホルモン」とも呼ばれ、それぞれの分泌量や作用のバランスが、私たちの幸福感に大きく影響します。幸福感を最大化するためには、次の順序で積み重ねることが重要です。セロトニン的幸福心と身体の健康を土台にした幸福感。例:適度な運動や日光浴、バランスの取れた食事による心身の安定。オキシトシン的幸福愛やつながりから得られる幸福感。例:家族や友人との触れ合い、ペットとの交流、感動体験。ドーパミン的幸福成功や達成感に基づく一時的な幸福感。例:目標達成、昇進、買い物の喜び。この順序を守ることで、幸福感を持続させる土台が築かれ、短期的な快楽に流されることを防げます。セロトニン、オキシトシン、ドーパミンの違いについて、さらに詳しく見ていきましょう。それぞれ異なる働きがあり、そのバランスが幸福感の質を左右します。1.セロトニン的幸福|心と身体の健康が生み出す幸福セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、私たちの心身の健康に深く関わる神経伝達物質です。主に不安感を和らげ、精神を安定させる作用を持ち、幸福感を支える基盤として重要な役割を果たします。セロトニン的幸福が最優先される理由は、心と身体の健康が幸福感の土台だからです。セロトニンが不足すると、不安やイライラが増え、人間関係や日常生活に影響を与えます。心身が健康でないと、物事に集中したり挑戦したりするエネルギーが湧きません。そのため、セロトニン的幸福が安定していなければ、次に続くオキシトシン的幸福(つながり・愛)やドーパミン的幸福(成功・達成感)も十分に得られないのです。セロトニンの分泌が促されることで、以下のような効果が期待できます。ポジティブで前向きな気持ちになる怒りや焦りを抑え、冷静に判断できるメンタルを安定させ、幸福感を得やすくなるストレス耐性が向上し、困難に立ち向かいやすくなるセロトニンの不足は、心身にさまざまな影響を及ぼします。不安感やイライラの増加うつ状態の悪化睡眠障害これらの問題を防ぐためには、日常生活でセロトニンを意識的に増やすことが大切です。2.オキシトシン的幸|愛とつながりがもたらす幸福オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、人間関係や愛情を育む際に分泌される神経伝達物質です。このホルモンはストレスを軽減し、精神的な安心感をもたらすことで、持続的な幸福感を支えます。オキシトシン的幸福は、セロトニン的幸福(心と身体の健康)を土台にして積み上げられることで効果的な幸福です。愛やつながりを感じることで、孤独感を癒し、人間関係を豊かにします。これにより、幸福感がより深く、長続きするものになります。家族や友人との信頼関係、恋愛、ペットとの触れ合いなどが、オキシトシンの分泌を促します。オキシトシンが増えると他者に優しくなり、その結果、自分も幸福感を得ることができます。オキシトシンの分泌が増えると、次のような効果が期待できます。ストレスの軽減:不安や心配を和らげ、リラックスを促進する気分の安定:情緒を穏やかにし、前向きな気持ちを支える脳の疲れを癒す:心を落ち着け、回復力を高めるオキシトシンが不足すると、次のような影響が現れることがあります。孤独感や疎外感の増加ストレスの悪化人間関係の希薄化による幸福感の低下現代社会では、仕事や忙しさの中でオキシトシンを活性化させる時間が少なくなりがちです。意識的にオキシトシンを増やす行動を取り入れることが大切です。3.ドーパミン的幸福|成功と快楽がもたらす一時的な幸福ドーパミンは「快楽ホルモン」として知られ、喜びや快感を生み出す神経伝達物質です。特に、目標を達成したときや報酬を得たときに分泌され、やる気や集中力を高める役割を果たします。ドーパミンには、光と闇の性質があります。適度に活用すれば大きな喜びや充実感を得られますが、過剰に追求すると依存症や心身の不調につながる危険性があります。光の性質:目標達成や新しいチャレンジでやる気や達成感を得るポジティブな作用闇の性質:SNSやギャンブル依存のように、快楽を追い求めすぎて破滅的な行動を取る危険性そのため、ドーパミン的幸福をうまく活かすためには、セロトニン的幸福(心と身体の健康)とオキシトシン的幸福(愛やつながり)を土台にすることが重要です。ドーパミンの適度な分泌には、次のようなポジティブな効果があります。多幸感が得られる:成功体験や報酬による満足感やる気がアップする:目標達成への意欲を高める集中力が高まる:特定の課題に深く取り組めるようになるドーパミンはとても扱いが難しいホルモンで、過剰に分泌したり、逆に不足することで返って幸福感を下げる原因にもなります。過剰:快楽を追求しすぎると、SNS依存やギャンブル依存などの行動に走ることがあります。不足:やる気や幸福感の低下、うつ病の一因になることもあります。そのため、ドーパミン的幸福は意識的に増やしつつ、依存を避ける適度なコントロールが必要です。ドーパミンの罠|現代社会が抱える依存症の原因ドーパミンには、大きな特徴があります。それは、ある行動で快感を得ると、その行為を繰り返したくなるという性質です。そして、さらに大きな快楽を得ようとして努力をするようになります。この性質は、適切に使えば成功や自己成長を促しますが、過剰に依存すると中毒症状や依存症の原因となります。ドーパミンの光の性質|快楽をポジティブに活用する方法ドーパミンは、「もっと頑張りたい」「次の目標に挑戦したい」という意欲を引き出す快楽ホルモンです。この性質を上手に活用すれば、成長や成功につながるポジティブな効果を得られます。ドーパミンがポジティブに働く場面として、次のような例があります。目標の達成小さな目標を設定し、それを達成することで達成感ややる気が生まれます。自己成長新しいスキルを習得したり、学びを深めることで、ドーパミンが分泌され、充実感を感じられます。新しいチャレンジ未経験のことに挑戦することで、成功への意欲が高まり、ドーパミンが刺激されます。仕事での成果プロジェクトを成功させたり、昇進を果たすことで、自己肯定感が高まり、次の目標へ向かうエネルギーが得られます。ドーパミンの光の性質を最大限活かすには、以下のような工夫が必要です。現実的な目標を設定する達成可能な範囲で目標を立て、少しずつクリアすることで、持続的にドーパミンを活用できます。ポジティブな刺激を選ぶ趣味や学び、運動など、自分の成長につながる行動を意識的に取り入れる。ドーパミンの闇の性質|中毒症状がもたらす依存性ドーパミンのもう一つの側面は、依存性です。ドーパミンが「もっと快楽を感じたい」という欲求を増幅させることで、人間は容易に依存状態に陥る危険性があります。この性質が制御できないと、最終的に人間関係の破綻や心身の崩壊につながる可能性があります。以下のような行動や習慣が、ドーパミン依存の典型例として挙げられます。お菓子依存チョコレートなど、甘いものを食べることで一時的に快楽を得るが、中毒症状を起こし、過剰摂取の原因になります。アルコール依存飲酒によるリラックス感や高揚感に頼りすぎると、長期的には心身に悪影響を与えます。SNS依存「いいね」やフォロワー数の増加に快感を覚え、簡単に快楽を手に入れようとします。ギャンブル依存勝つことで得られるドーパミンの放出が、中毒的な行動を引き起こします。買い物依存購入の瞬間に快感を得るが、後悔や金銭的な問題を招きます。スマホゲーム依存報酬型の仕組みによって快楽を刺激し、時間感覚を麻痺させます。恋愛依存恋愛初期の高揚感に過度に依存し、パートナーとの健全な関係が築けなくなる。新しい恋愛を次々に求めることもあります。ポルノ依存ポルノによる瞬間的な快感に依存し、現実の人間関係に興味を失うことがあります。頻繁な使用は脳内の報酬系を過剰に刺激し、習慣化しやすい傾向があります。これらは、ドーパミンが報酬系という特徴を持っているホルモンであることが原因です。特定の行為を繰り返すことで脳がその快感を学習し、さらに強い刺激を求めるようになります。これが「もっと、もっと…」という無限ループを生む仕組みです。適度な快楽の活用は重要ですが、依存状態に陥らないようドーパミンの制御を意識することが必要です。インターネットはドーパミン的幸福の温床現代社会では、インターネットがドーパミン的幸福を簡単に得られる環境を提供しています。企業はこのドーパミンの依存の性質を巧みに利用し、ユーザーを魅了するコンテンツを次々と生み出しています。SNS「いいね」やフォロー数の増加、投稿への反応が、一時的な快感を与えます。これがSNS中毒の原因となります。YouTubeや動画配信サービス次々と表示される「おすすめ動画」が、飽きることなく快感を提供し続けます。スマホゲーム報酬型の設計により、クリアやランキング上昇が報酬感覚を強化します。漫画やアプリの課金コンテンツストーリーの続きやアイテム購入による一時的な満足感が、次々と課金行動を促します。ドーパミンが過剰に刺激されると、以下のような行動に繋がるリスクがあります。過激な行動のエスカレートSNS上での「炎上商法」や、注目を集めるための過剰な発言・行動。収入に見合わない支出ゲームやアプリでの課金、衝動的な買い物が生活を圧迫する。健康や人間関係への悪影響スマホやインターネットの使用時間が増えすぎると、健康や家族・友人との時間が犠牲になる。あわせて読みたい承認欲求をなくす方法|SNSや恋愛依存から脱却し自分を満たすには?三大幸せホルモンの積み重ね方|不足を補い、持続的な幸福を得る方法ここまでで、セロトニン的幸福、オキシトシン的幸福、ドーパミン的幸福という3つの幸福ホルモンについて理解していただけたでしょうか?「なぜか心が満たされない」という状態に陥る多くの人は、この3つのホルモンのバランスが崩れ、ドーパミン的幸福ばかりに偏っていることが原因です。短期的な快感を追い求める一方で、心身の安定を支えるセロトニンや、人間関係を豊かにするオキシトシンが不足しているのです。では、どうすればこれらのホルモンをバランスよく増やし、積み重ねることができるのでしょうか?次に、その具体的な方法をお伝えします。1.セロトニン的幸福の増やし方|幸福感の土台を整える方法セロトニンは、幸福感を持続させるための土台を作る重要なホルモンです。不安を軽減し、心身のバランスを保つ効果があるため、まずはセロトニンを増やすことから始めることが大切です。<セロトニンを増やす具体的な方法>タンパク質をしっかり摂るセロトニンの生成に必要なトリプトファンは、肉、魚、乳製品、大豆食品、卵などのタンパク質に多く含まれています。よく噛んで食べる食事中によく噛むことで、脳内のセロトニン分泌が促進されます。咀嚼はリラックス効果も期待できます。日光を浴びる朝起きたら、太陽の光を浴びることで体内時計が整い、セロトニンの分泌が活性化します。特に朝散歩は効果的です。適度な運動を取り入れる運動はセロトニンの分泌を促進する代表的な方法です。軽い運動でも効果があるため、ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど習慣化しやすい活動を選びましょう。日常生活に上記の方法を取り入れることで、セロトニン的幸福を積み重ねることができます。これらを意識するだけでも、大きな効果を実感できるでしょう。2.オキシトシン的幸福の増やし方|愛とつながりで心を満たす方法セロトニン的幸福が心と身体の健康を支える土台なら、オキシトシン的幸福は愛やつながりを通じて心を豊かにする重要な要素です。オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、人間関係や感動体験によって分泌が促されます。<オキシトシンを増やす具体的な方法>ペットと触れ合う動物との交流は、オキシトシン分泌を大きく促進します。ペットを飼っていなくても、犬や猫の動画を見るだけでも効果があります。スキンシップを取る他者とのスキンシップだけでなく、自分を抱きしめるセルフハグや、抱き枕やぬいぐるみなど柔らかい素材に触れる行為もオキシトシンを増やします。音楽や映画で感動する心を動かす音楽や映画、アートに触れることで、感情が揺さぶられ、オキシトシンが自然に分泌されます。他人に親切にする見返りを求めない親切な行動は、相手の幸福感を高めるだけでなく、自分自身にもオキシトシンを増やす効果があります。瞑想をする瞑想はストレスを軽減し、感情を穏やかにすることでオキシトシンの分泌を促します。リラックスできる環境で、深い呼吸を意識して行うと良いでしょう。オキシトシン的幸福を増やすためには、日常生活に感動やつながりを意識的に取り入れることが重要です。家族や友人との時間を大切にしたり、小さな親切を積み重ねるだけでも大きな効果を感じられるでしょう。3.ドーパミン的幸福の増やし方|成功と快楽を健康的に活用するドーパミンは、その依存性の高さから注意が必要な一方、意識的に活用すれば、やる気や幸福感を増やす大きな力になります。短期的な快感を求めるだけでなく、時間や行動を伴う持続的な方法でドーパミンを分泌させることが重要です。<健康的にドーパミンを増やす方法>小さな目標を立てて達成するドーパミンは目標達成による達成感で分泌されます。無理のない範囲で小さな目標を設定し、一つひとつクリアしていくことで、成功体験を積み重ねましょう。趣味や好きなことを楽しむ自分が心から楽しめる活動を取り入れることが、幸福感を高めるカギです。絵を描く、料理をする、音楽を聴くなど、時間を忘れて没頭できる趣味を見つけましょう。新しいことにチャレンジする未体験のことに挑戦することで、好奇心を刺激し、ドーパミンが分泌されます。旅行、習い事、新しいスキルの習得など、未知の世界に踏み出すことがおすすめです。自分にご褒美をあげる小さな目標を達成したら、自分自身にご褒美を用意しましょう。好きな食べ物や映画鑑賞、リラックスできる時間など、満足感を得られる行動が効果的です。ドーパミンは、SNSやスマホゲームのように簡単に承認欲求を満たす方法で過剰に刺激されやすい傾向があります。これらは一時的な満足感しか得られず、依存症のリスクを高めるため、意識的に制限しましょう。ドーパミン的幸福を上手に活用するには、セロトニン的幸福とオキシトシン的幸福の土台が必要です。健康的な心身の状態と愛やつながりを確保したうえで、ドーパミンによる達成感や快楽を楽しむことが、持続的な幸福感の秘訣です。あわせて読みたい幸せが実は不幸を招く?脳科学的に見る不幸の原因まとめ幸せの三段重理論は、セロトニン、オキシトシン、ドーパミンという3つのホルモンのバランスを整えることで、持続的な幸福感を得られる科学的なアプローチです。短期的な快楽に偏らず、心身の健康や人間関係の充実を優先することで、幸福感を根本から高めることができます。三大幸福ホルモンは、セロトニン的幸福、オキシトシン的幸福、ドーパミン的幸福に分類されるセロトニン的幸福 → オキシトシン的幸福 → ドーパミン的幸福の順に積み重ねることで、持続的な幸福感を得られるセロトニンは心と身体の健康、オキシトシンはつながりや愛、ドーパミンは成功や快楽を司るホルモンドーパミンは依存性が高いため、スマホやSNSなど手軽に快感を得られるものには注意が必要「精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法」樺沢紫苑 (著)オススメ関連記事幸福度を上げる方法|実は「幸せを増やす」より「不幸を減らす」がカギだったなぜ顔加工をやりすぎてしまうのか?|別人化する心理とその対処法