「自分とは何か?」「人生に意味はないのか?」といった疑問や悩みを持ち、哲学に興味を持つ人も増えています。哲学の歴史には、西洋哲学と東洋哲学という二つの大きな流れがあります。西洋哲学は論理や知識を積み重ねることを重視し、東洋哲学は直感や体験を通じた学びを重んじる傾向があります。初心者におすすめの哲学書として人気なのが、飲茶さんの『史上最強の哲学入門』シリーズです。西洋哲学の歴史と思想を学びたいなら『史上最強の哲学入門』、東洋哲学の歴史と思想を学びたいなら『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』がぴったりです。今回は、哲学にあまり馴染みのない人でも入りやすい『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』に焦点を当ててまとめ、要約したものを紹介します。東洋哲学とは?|西洋哲学との違い東洋哲学は、単なる知識として学ぶものではなく、体験や直感を通じて理解するものです。一般的に西洋哲学は、外側の世界に真理を求め、論理や理性を重視します。人間は「無知」であることを前提にし、知識を積み重ねることで発展していくという考え方が根底にあります。一方、東洋哲学は、内側の世界に真理を求めます。悟りや直観的な気づきを重視し、「すでに真理は内在している」という考えが基本にあります。そのため、世代を超えてさまざまな解釈が生まれ、多様な思想が発展してきました。このように、東洋哲学は「知る」ことではなく、「気づく」ことを大切にする哲学なのです。東洋哲学とは、学ぶことでは決して理解に達することができないものです。「悟り」の心理を説いたインドの哲人たちヤージュニャヴァルキヤー|自己の探求ヤージュニャヴァルキヤは、「梵我一如」を説いた哲人です。梵我一如とは、世界を成り立たせている原理(梵)=ブラフマンと、個人を成り立たせている原理=アートマンが、実は同一のものである(一如)という理論です。これを知ることで、人は苦悩から解放され、すべての心理に到達すると言われています。哲学の歴史を見ても、自己の探求はその中心にあります。現代のスピリチュアルの世界では、悟り、ワンネス、非二元、ノンデュアリティといった言葉で語られることが増えていますが、その原点は哲学の歴史に深く根付いています。まさに、真理は紀元前から受け継がれているのです。釈迦|我を破壊した仏教の開祖釈迦は、無我、つまり「『私』は存在しない」という教えを説いた哲人です。瞑想によって「私は存在しない」ことを悟り、人間の苦しみである生老病死を克服しました。釈迦の教えの中で有名なのは、四諦(したい)と八正道(はっしょうどう)です。四諦とは、人生の真理を示したものです。苦諦(くたい)…人生は苦しみである集諦(じったい)…苦しみの原因は執着や欲望である滅諦(めったい)…執着や欲望をなくせば苦しみは消える道諦(どうたい)…苦しみをなくす方法がある八正道とは、四諦の原因である苦しみをなくすための具体的な方法を示したものです。正見(しょうけん)…正しい見方正思惟(しょうしゆい)…正しい考え方正語(しょうご)…正しい言葉遣い正業(しょうごう)…正しい行い正命(しょうみょう)…正しい生計の営み正精進(しょうしょうじん)…正しい努力正念(しょうねん)…正しい意識の向け方正定(しょうじょう)…正しい精神の安定この教えは、釈迦が人生の苦しみを乗り越えるために体系化したものであり、現代でも多くの人が指針としています。龍樹|大乗仏教の最終兵器龍樹は、西暦150~250年頃にインドで活躍した仏教哲学者で、「すべては空(くう)である」という思想を体系化しました。「空」の概念は、般若心経にも表れています。有名な一節「色即是空、空即是色」は、「物質には実体がなく、実体がないということが存在そのものである」という意味を持ちます。つまり、この世界は確かに存在するように見えるが、実際には固定された実体はなく、すべては変化し続ける幻想のようなものだ、という考えです。釈迦の時代から存在した「空」の思想を、龍樹は哲学としてさらに発展させ、大乗仏教の基盤を築きました。この考え方は、現代の仏教やスピリチュアルの領域でも重要視されています。あわせて読みたい悟りの境地とは?悟りを開いた脳科学者が教える心の使い方「タオ」の真理を説いた中国の哲人たち孔子|儒教の教祖孔子は儒教の教祖であり、「仁」と「礼」の教えを説きました。仁とは、家族と接しているときに自然と生まれる、人を思いやる気持ちのことです。礼とは、それを態度として表す礼儀作法のことを指します。つまり、孔子の思想を簡単に言えば、「思いやりの気持ちを大切にし、礼儀正しく生きましょう」ということです。孔子の教えは日本にも深く根付いており、親や年長者を敬う文化は儒教の影響を受けているといわれています。墨子|強肉弱食の熱血漢墨子は、「兼愛」を説いた人物です。兼愛とは、「自身を愛するように他人を愛しなさい」という意味を持つ思想です。儒教の「仁」は身内に対する愛でしたが、それは言い換えれば、身内以外は愛さないという考え方でもありました。墨子は、これが混乱や戦争の原因になっていると考えました。孟子|儒家のミスターセカンド孟子は、性善説をベースに孔子の儒家(儒教)の教えである「仁」を発展させた人物です。性善説とは、人は生まれながらにして善の心を持っているという考え方です。つまり、人は誰でも人間の悲しみを見過ごすことのできない「仁」を持っていると孟子は説きました。たとえば、今ここに、よちよち歩きの子どもが井戸に落ちかけているのを見かけたとします。すると、人は誰でも驚き慌て、いたたまれない気持ちになり、助けに駆け出すはずです。その瞬間、子どもの両親と親しくなろうと考えているわけでもなく、人命救助の名誉を得たいと思っているわけでもありません。孟子はこのような例を用いて、すべての人が本来「善」の心を持っていることを説明しました。荀子|東洋のアリストテレス荀子は、性悪説をベースに孔子の儒家(儒教)の教えである「礼」を発展させた人物です。性悪説とは、人は生まれながらにして悪の心を持っているという思想です。そのため、社会を維持するためには「礼」が重要であると説きました。つまり、ルールや規範を定め、それを守ることで秩序が保たれるという考え方です。荀子の教えは、現代においては現実的で当然のことのように思えますが、古代中国では戦争や災害、疫病などを天の意志と考えていたため、こうした科学的・哲学的な思想は画期的なものでした。韓非子|法術理論の貴公子韓非子は、儒教の「仁」を批判し、「法」の重要性を説いた人物です。「法」とは、「礼」のようにルールや規範を重視する点では共通していますが、「法」は刑罰によって強制されることが特徴です。韓非子の考え方は、現代における成果主義にも通じるものがあり、当時の中国の国家を強化する上で大きく貢献しました。老子|脱力最強の大哲学者老子は、道教(道家)の始祖とされています。道教とは、「無為自然」、すなわち宇宙のあり方に従い、自然のままに生きることを説く教えです。この原理を「道(タオ)」と呼びます。老子の思想には、「弱いものが強い」「負けることで勝つ」といった逆説的な価値観が含まれています。老子の書は全体で5000文字ほどしかなく、彼が実在したかどうかも定かではありませんが、その思想は現代に至るまで評価され続けています。荘子|東洋哲学最大の表現者荘子は、老子の哲学を受け継ぎ、発展させた人物です。老子と荘子の哲学を合わせて「老荘思想」とも呼ばれています。荘子は、老子の哲学を寓話として伝えました。そのため、老子の思想を学ぶならば、まずは荘子の書から読むのが良いともいわれています。道教において、荘子は極めて重要な位置を占める存在です。「禅」の真理を説いた日本の哲人たち親鸞|無知愚悪の破戒僧親鸞は、仏教の宗派である浄土真宗の開祖であり、「他力本願」を説いた人物です。僧侶として初めて妻を持ち、四男三女をもうけました。現代でも、日本以外の仏教では妻帯は禁止されています。そのため、鎌倉時代の当時において親鸞の行いは非常に衝撃的なものでした。「他力本願」の「他力」とは、阿弥陀如来の力のことを指します。念仏を唱えることで阿弥陀如来の力を借り、幸せになれるというのが親鸞の教えです。それまでの仏教は、厳しい修行を積んだ僧侶のみが救われるとされていました。しかし、親鸞は学のない民衆でも救われる方法として「他力本願」にたどり着きました。栄西|禅と茶の開祖栄西は、日本に禅をもたらした僧であり、臨済宗の開祖として知られています。また、禅の眠気覚ましとしてお茶を広めたことでも有名です。禅といえば、一休さんのなぞなぞのような「禅問答」が知られています。これは臨済宗の修行で行われるもので、思考を通さずに物事を理解することを目的としています。そのため、禅問答では論理的に答えを出せない、意味不明な問いを投げかけられます。これにより、頭が真っ白になり、思考が止まることで悟りが生まれるとされています。道元|非情求道の座禅王道元は、仏教の宗派である曹洞宗の開祖です。彼が残した「正法眼蔵」は、後にハイデガーの存在論やスティーブ・ジョブズにも大きな影響を与えました。栄西と同じく禅を重んじましたが、道元は特に「只管打坐(しかんたざ)」を重視しました。只管打坐とは、ただひたすら座禅に打ち込むことです。東洋哲学では、悟りを得るためにさまざまな方法が考えられてきましたが、あまりに複雑化したため、かえって迷いを生んでしまうことがありました。そこで、道元は余計な概念を取り払って「座禅」というシンプルな形に戻したのです。あわせて読みたい煩悩を捨てることは本当に必要?断つのではなく活かす方法とは?まとめ仏教、儒教、道教といった東洋哲学は、単なる宗教ではなく、生き方や価値観に深い影響を与える思想体系です。飲茶さんの『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』は、こうした東洋哲学のエッセンスをわかりやすくまとめた一冊です。哲学を学びたい社会人や初心者にも最適で、難解な理論を噛み砕きながら紹介してくれます。この本を通じて、哲学の歴史を知りながら、自分自身の生き方を見つめ直すきっかけを得られるかもしれません。また、『史上最強の哲学入門』と合わせて読むことで、西洋哲学との違いを理解しながら、より広い視野で哲学を学ぶことができます。おすすめの哲学書なので、ぜひ一度手に取ってみてください。史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち 飲茶 (著)史上最強の哲学入門 飲茶 (著)オススメ関連記事悩みがない人が実践する悩みを消す方法|悩みすぎるあなたへ贈る解決のヒントタイムパフォーマンスを追求しすぎると失うものとは?