自傷行為は多くの人が抱える深刻な問題ですが、その背後にある本当の目的を理解することで、解決への道が開けます。クライアントさんのセッションを共有しながら、自傷行為の原因を探り、克服するための具体的なステップを一緒に学んでいきましょう。クライアントのUさんは、「身体に痛みや刺激を与えることがやめられない」というお悩みでした。クライアントのUさんは、転換性障害をお持ちで左足と右腕の感覚が弱くなっており、その部位に感覚を感じるために、マッサージガンを使って刺激を頻繁に与えているとのことでした。ご本人にとっては、特に今のところ大きな障害にはなっていないようで、自傷行為とは思っていないようですが、良くないことのように感じるので、不安でどうしたらいいかわからないとのこと。セッションの目的としては、これが良いことなのか悪いことなのかをUさんの中ではっきりさせ、納得できるようにすることでした。もし、あなたやあなたの周りで、分かっていてもやめられないこと、自分にとっては必要だと感じるけど他人から見たら良くないことで悩んでいる状態でしたら、きっと何かのヒントになるでしょう。あわせて読みたい変わりたいけど変われない人へ|努力をやめれば報われる理由と方法痛みの本当の目的の見つけ方「痛みの目的」という視点が、とても重要です。自傷行為のような一般的にネガティブと思われる行動に対して、人は原因を探してしまいがちです。ですが、このアプローチで例え原因を自分なりに見つけたとしても、結局何も改善には繋がらない方が多いです。そんな時には、反対方向に視点を向けてあげると効果的です。つまり、自傷行為をしてしまう原因ではなく、自傷行為で得られる恩恵に目を向けるということです。そのためには、こんな質問を自分にしてみましょう。痛みを与えることは、自分に何をもたらしてくれるのだろう?自分を傷つけることで、私は何を得ているのだろう?まず、頭に留めておいてほしいのは、一見ネガティブに見える行動でも、そこには必ずポジティブな要素が含まれているということです。人は無意識的に自分を守るため、生かすための行動をするようにできます。ですから、「自分を守るために自分を傷つける」ことだってあるのです。さて、Uさんはこの質問に対してどんな答えが出たか見ていきましょう。左足と右腕の感覚を感じるために、痛みや刺激を与えているとおっしゃっていたUさんですが、詳しく話を聞いていくと、痛みを感じたくてピアスを開けたり、またタトゥーを入れたいという想いもありました。どうやら、特定の部位だけではなく、痛みや刺激を感じること自体に意味があるようでした。痛みや刺激を与えることは、何をもたらしてくれますか?えーと、「自分がここにいる」という感覚かな。分離がなくなるというか…。あ!それかもしれないです!私、実は離人症を持ってて、自分が自分じゃないような感覚があるんです。だから、自分を自分だとしっかり認識したくて、痛みや刺激を求めてたのかも…。ずっと、転換性障害のせいだと思い込んでいたけど、こっちですね。この問いによって、Uさんに大きな気づきが生まれたんです。あわせて読みたい目標達成の鍵!メタアウトカムの使い方と実践例自傷行為に対する善悪の確認方法自傷行為の本当の目的が分かれば、それが良いことなのか悪いことなのかの判断もつけられうようになります。それを判断するためには、次の質問を使います。自分を傷つけることで、何か問題や障害が起こる可能性はあるだろうか?例えば、リストカットなどであれば、「傷が残る」「傷跡が仕事や人間関係に影響する」といった問題が起こるかもしれません。そういった問題や障害を発見した場合には、次のステップに進みます。Uさんの場合は、身体に傷をつけるレベルではなかったので、ここで問題は解決しました。今は、ぜんぜん悪いことだとは思わない。罪悪感もないし、これ以上過激になる心配もなさそうだし、「自分がここにいる」と感じるためのひとつの手段として利用するのには、全然問題がないと思います。というお答えでした。あわせて読みたい人生の選択に迷ったら第三の選択肢を探せ!納得の決断法目的達成の代替手段を探す後になって傷が残ったり、問題や障害が生まれる場合には、今行っている自傷行為の代わりになる手段を探す必要があります。なぜなら、「やってはいけないこと」という意識がある中での自傷行為は、罪悪感や自己否定の感情を生み、良くなるどころか悪くなる可能性があるからです。なので、こういった質問をしてあげると効果的です。目的を果たすために、他にどんなポジティブな方法があるだろうか?Uさんの場合は、「自分がここにいると感じること」でしたね。最初の質問で見つけたあなたの目的を、この質問に当てはめて考えてみてください。セッション後のUさんの変化セッションの最後に、Uさんからこんなフィードバックをいただきました。痛みや刺激の目的がわかったことで、罪悪感もなくなったし、何のためにやるかを知ってやることはとても大きいです。そして、それに気づけたのでピアスとかタトゥーとかをしたいという気持ちもなくなりました。Uさんの場合は、痛みや刺激を与えることが自傷行為なのか、常同運動症なのかわからず心配されていました。コーチングは医療行為ではないので、その判断は僕にはできません。なので、その点についてはかかりつけの精神科で確認していただくことを推奨し、ご理解いただいてます。ただ、ご本人にとっては、「痛みや刺激を与える理由や目的をちゃんと伝えられるようになったので医師に相談しやすい」と言っていただけました。※クライアントさんには、事前にセッション内容をブログに掲載することの許可をいただいていますオススメ関連記事承認欲求をなくす方法|SNSや恋愛依存から脱却し自分を満たすには?悩みを解消する!自己カウンセリングテンプレートの使い方