「若いですね」「綺麗ですね」「優しいですね」そんなふうに褒められたのに、なぜか素直に喜べない——。褒め言葉が嫌味に聞こえたり、嘘にしか感じられなかったり、イライラしたり、気持ち悪いとすら感じてしまうこともあるかもしれません。たとえ、相手に悪気がないとわかっていても、なぜか心が抵抗してしまって「ありがとう」と言えなかったりすること…ありますよね。この記事では、そんな「褒められるのが苦手」な感覚の正体と、その違和感をやわらげ素直に褒め言葉を受け取るための方法を、やさしく解説していきます。褒められるのが苦手なのはHSPだから?|実は多くの人が抱えている心の問題「褒められるのが苦手」と感じている人は、実は少なくありません。たとえば、こんなふうに思ったことはないでしょうか?「若いですね」と言われると、嫌味に聞こえる「綺麗ですね」と言われても、嘘っぽく感じてしまう「優しいですね」と褒められて、なぜかイラッとしてしまう外見や容姿を褒められると気持ち悪く感じてしまうたとえ、相手に悪気がないのはちゃんとわかっていても、どこか居心地が悪くて、素直に「ありがとう」が言えない——。そんな自分にモヤモヤして、「どうして私はこうなんだろう?」と責めてしまうこともあるかもしれません。褒められても嬉しくない人の心理的背景と悩み「褒められること」は、一般的には嬉しいことのはず。でも、そう素直に思えない人達は、以下のような心理的背景や悩みを抱えやすいです。「褒め言葉が嫌味に聞こえるのは、私がひねくれてるだけ?」「嘘にしか聞こえないのに、どう返せばいいの?」「褒められるとイライラする。でも、そう感じる自分がイヤ」「容姿を褒められるのが気持ち悪い。見た目ばかり見られてる気がして怖い」こんなふうに感じていると、むしろ、もらった言葉に戸惑ったり、気まずさを感じたり、自己嫌悪に陥ってしまいます。あわせて読みたい自分を好きになれない人必見!心理学が教える自分を好きになる方法クライアントEさんのケース|「褒められても素直に受け取れない」クライアントEさん(女性・50代)も、同じような悩みを抱えていました。若いとか、スッピンが綺麗とか、優しいとか言ってもらうことがあるんですが、そう褒められるとなぜか一瞬身体が固まってしまって、うまく相手に言葉を返せないんです。そこで会話が止まって変な空気にさせてしまうので、褒め言葉を素直に受け止められるようになりたい。Eさんは、「こんなふうに反応できない自分って、おかしいのかな」と感じながら、セッションに来てくれました。でも実はその"心の抵抗"には、ちゃんと理由があったんです。それも、ごく個人的で、でも多くの人が共通して抱えているある心の仕組みが関係していました。褒め言葉が嘘に聞こえる理由|心の抵抗を生む「自分の中の前提」褒められたときに感じるモヤモヤ。その正体は、自分の中に存在する"ある前提"が影響していることがあります。たとえば、こんなふうに思っていないでしょうか?「努力したことしか褒められるべきじゃない」「人を褒めるのは、社交辞令や本心じゃないことが多い」「外見ばかり褒める人は、相手を軽く見ている」「褒められるのは、何か裏があるときだ」「素直に喜ぶと、自意識過剰に思われそうで怖い」そんな価値観が心のどこかにあると、褒められたときに疑いが生まれてしまい、素直に受け取ることができなくなります。こういった考えがどこかにあると、褒め言葉を素直に受け取るのが難しくなってしまうんです。自分の価値観に反した褒め言葉は、嫌味に感じたりイライラする誰かに褒められたとき、言葉そのものはポジティブなはずなのに、なぜか胸の奥がザワッとする。表情は笑っていても、内心ではこんなふうに感じているかもしれません。「いや、それはちがう」「ちゃんと見て言ってる?」「それって本気で思ってるのかな…」「なんか、軽く扱われた気がする…」このザワッという感覚は、無意識の価値観が反応しているサインです。心が拒否反応を起こす例たとえば、「気が利きますね」と言われたとき、表面では「ありがとうございます」と答えながらも、心の中ではモヤモヤしてしまうケース。このとき、「気が利く」という言葉に反応しているのは、もしかしたらこんな価値観があるからかもしれません。「気が利くとは、自然に気配りができること」「無理して合わせるのは本当の気配りじゃない」つまり、「気が利くとはこういうことだ」と思っている自分の価値観に対して、自分がそれに反した行動をしていると、褒め言葉を心が拒否してしまうんです。こうした反応は、その人の性格がひねくれているからではありません。ただ、自分の中の"本当はこうあるべき"という基準とズレているからなんです。あわせて読みたいトレーニング不要!他人軸な人生を変える自分軸の作り方褒められると気持ち悪いのは、無意識に"自分のルール"で判断しているからでも、よく考えてみると、相手はあなたのことを「完璧だ」「努力してる」など、必ずしも明確な判断基準を持った上で褒めているわけじゃないかもしれません。「なんとなくそう感じた」「その瞬間、素敵だなと思った」「ただ伝えたくなった」「なんか若々しいな」「柔らかい雰囲気で素敵だな」「やさしい言葉をくれて嬉しかったな」そんな気持ちで、ふと口にした言葉かもしれません。でも、受け取る側が「こんな自分が褒められるわけない」と思っていたら、その一言すら、嫌味や嘘のように聞こえてしまうんです。このように、「褒められるのが苦手」という反応の裏には、自分でも気づいていない"心のルール"や"前提"が隠れていることがあります。では、その心の抵抗をどう外していけるのか、次からは実際のアプローチをご紹介していきます。褒められても信じられない人のための心の抵抗を外す3ステップ褒められたときに感じる違和感やモヤモヤ。こういった心の抵抗は、向き合い方次第でちゃんと変わっていきます。ポイントは、自分の中にある"前提"や"ルール"に気づくこと。そしてそれが、「必ずしも正しいとは限らない」という視点を持てるようになることです。1.素直に受け取れた褒め言葉を思い出してみるまずは、「褒められても違和感がなかった場面」を思い出してみてください。そのためには、以下の質問を自分にします。「どんなときに、褒め言葉を自然に受け取れただろう?」「なぜ、そのときは素直に『ありがとう』と言えたのだろう?」たとえば、「手料理を褒められたとき、素直にありがとうって思えたな」と感じたことがあるかもしれません。その理由を掘り下げていくと、「自分でも納得できていた」「ちゃんとやったと思えていた」など、抵抗が出ない条件が見えてくるはずです。Eさんのケース|素直に反応できた背景とその理由まず、Eさんにも「褒められて素直に反応できた場面」を振り返ってもらいました。Eさんが褒められて素直に反応できた時はいつですか?→ 「仕事に対して褒められた時」さらに理由をたずねると、こう答えました。なぜ、仕事のことは褒められて素直に反応できるんでしょう?→ 「自分でも"頑張った"という想いがあるから」Eさんの場合は、この「頑張った」という感覚が、心の抵抗を起こさない理由だったのです。2.褒められても信じられない理由を探ってみるを掘り下げる次は、褒め言葉に対してモヤッとしてしまう理由を探ってみましょう。違和感を感じるとき、心の中では、「そんなふうに言われるような自分じゃない」「それって、本当に思って言ってるの?」といった声が聞こえてくることがあります。その背景には、自分の中にある"褒める基準=価値観"が隠れていることが多いのです。それを見つけるためには、こんなふうに問いかけてみてください。「私は、人のことを"○○だな"って褒めたくなるのは、どんなときだろう?」ここでの「○○」には、自分が言われてモヤッとした褒め言葉をそのまま入れます。たとえば、「優しい人だな」と思うとき、それは…誰に対しても気配りしている人を見たとき?言いたいことを我慢して、相手に合わせている人を見たとき?頼まれごとを断らずに受け入れているとき?こうやって掘り下げていくと、自分が「○○って、こういう人のことを言うんだよね」と、無意識に基準をつくっていることに気づくことができます。Eさんのケース|心の抵抗が起こる背景とその理由Eさんにも、まず「どんな褒め言葉に引っかかりを感じたか」を振り返ってもらいました。どんなときに褒め言葉を素直に受け取れないと感じますか?→ 「『若いですね』と言われたとき」そこで、こう尋ねました。人が若く見えるのは、なぜだと思いますか?→ 「そのための努力をしているから」Eさんにとっては、努力、つまり"頑張った"感覚がなければ、褒め言葉を受け入れられないという価値観が存在していたのです。ここで見えてくるのは、ステップ1と2で価値観が共通しているという点です。「仕事」は"頑張った"という実感があったから素直に受け取れた一方、「若さ」については"頑張ってない"と感じたから、受け取りづらかったつまり、Eさんにとっての褒め言葉を受け取れる、受け取れないの分かれ目は、「努力した感覚があるかどうか」だったのです。このように、自分の中にある"基準"や"ルール"に気づけると、褒め言葉に対して感じる反応にも納得がいくようになってきます。3.その前提、本当に正しい?|視点を変える問いかけここまでで、自分の中にある「こうあるべき」という前提に気づけたら、次はその前提を少しだけ横から眺めてみましょう。こんなふうに、順番に自分に問いかけてみてください。「私は、誰かを○○と褒めるとき、実際にその基準で判断してるだろうか?」「他には、どんな理由で○○だと感じることがあるだろう?」「じゃあ、誰かが私に"○○だね"と言ったとき、その人はどんな気持ちでそう言ったんだろう?」すると、「あれ、自分の中のルールって、意外と絶対じゃないかも」と気づく瞬間があります。Eさんのケース|「若い=努力の結果」?その思い込みに気づいた瞬間Eさんにも、相手の言葉をどう受け取っていたのかを振り返ってもらいました。Eさんは、相手が若いかどうかを、その人が努力しているかどうかで判断していますか?→ 「いいえ。というか、努力しているかどうかなんて分かんないですよね」では、なぜ相手を見て"若い"と思うのですか?」→ 「なぜって…若く見えたから」では、誰かがEさんを見て"若い"と思ったとき、なぜそう思ったんでしょう?→ 「若く見えたから…ですね」このとき、Eさんの中で気づきが生まれました。あれ?若く見えたから「若い」って言っただけで、私が努力したかどうかなんて関係ないですね…このように、自分の勝手な価値観を通して、相手の言葉を受け止めていたことに気づいたんです。そして、こう振り返りました。その人から見たら若く見えたんだから、ただそれだけですよね。だったら、素直に「ありがとう」って言えそうです!あわせて読みたい正解がわからない…決断できないのは自己理解が足りないからセッション後のEさんの変化|「素直に喜べばよかったんだ」「努力していないことを褒められるのが受け入れられない」という前提に気づいたEさんは、セッションの中で、他の褒め言葉にも同じような傾向があることに気づいていきました。そして、同じように価値観をひとつずつ見直していくことで、少しずつ心の抵抗がやわらいでいったんです。セッションを終えた後、Eさんはこんなふうに感想を語ってくれました。褒められたら、素直に喜べばいい。そんな単純なことに、今まで気づきませんでした…。若く見えることと努力は関係ないのに、自分の中で勝手に因果関係をつくってしまっていたんですね。このように、人は誰でも「こうあるべき」「こうじゃないと認められない」といった、自分なりの価値観や思い込みを持って生きています。それが良い方向に働くこともあれば、今回のように心の抵抗を生んでしまう原因になっていることもあります。でも、それに気づいて視点を少し変えてみるだけで、思っていたよりもずっとラクに、人の言葉を受け止められるようになるんです。※クライアントさんには、事前にセッション内容をブログに掲載することの許可をいただいていますまとめ褒められても素直に喜べない、そんな自分に違和感を抱いてしまう…。でもそれは、あなたがひねくれているからでも、性格が悪いからでもありません。そこには、無意識に信じてきた「こうあるべき」という前提や価値観が関係していることが多いんです。今回ご紹介したようなアプローチを行えば、心の抵抗を外していくことは十分に可能です。褒められても嬉しくないのは、ごく自然な感情反応違和感の裏には、「自分の中のルール」が隠れている素直に受け取れた例外を思い出すと、ヒントが見えてくるその"当たり前"を疑ってみることで、心は少しずつ自由になるオススメ関連記事「今の自分が嫌い」理由は過去への執着?自分を受け入れ変える方法短所を長所に変える!リフレーミングで前向きな思考を手に入れる方法